インターネット上での個人認証やログイン方法に、革命が起きようとしています。それが「DID(Decentralized Identifier/分散型ID)」という新しい概念です。
従来のID管理は、SNSやメールアドレス、パスワードなど、中央集権的な仕組みに依存していました。しかしDIDは、ユーザー自身が自分のIDを完全にコントロールし、プライバシーを保ちつつ安全なデジタル活動を可能にします。
この記事では、DIDの技術や仕組みについて初心者にもわかりやすく解説していきます。
DIDとは?その基本概念
DIDは「分散型識別子(Decentralized Identifier)」の略で、ブロックチェーン技術などを利用して管理される、新しいIDのかたちです。
簡単に言えば、「自分自身で発行し、管理できるID」です。
これまでのようにGoogleアカウントやFacebookアカウントに頼ることなく、誰にも支配されない形で、自分の身元を証明できるのが特徴です。
DIDの例:
did:example:123456abcdef
このような形式で、個人、法人、モノ、サービスなど、あらゆる主体が識別子を持つことができます。
なぜDIDが必要なのか?背景と課題
現在のID管理には、以下のような問題があります:
- GoogleやAppleなどに個人情報を依存
- パスワードやログイン情報の漏えいリスク
- 複数のサービスでIDがバラバラ
DIDはこれらの問題を解決するために登場しました。
ユーザー自身がIDの所有者となり、誰にも干渉されずに、安全かつ自由に使えるデジタルIDとして注目されています。
DIDの技術的な仕組み
1. DID Document(DIDドキュメント)
各DIDは、それに紐づく公開鍵やメタデータ、サービス情報などを記載したDIDドキュメントを持ちます。
これはブロックチェーン上や分散型ネットワーク上に保存され、誰でも確認できるようになっています。
2. DID Resolver(リゾルバ)
ユーザーがDIDを提示すると、DIDリゾルバがブロックチェーンなどを参照してDIDドキュメントを取得し、IDの正当性を確認します。
3. Verifiable Credentials(検証可能な証明)
DIDに紐づけられるのが、政府や大学、企業などの発行する「証明書」です。これを使えば「◯◯大学を卒業した」「本人確認済み」といった実績を、ユーザー自身が管理・提示できます。
▶ W3C公式:Verifiable Credentialsの仕様
DIDのメリット
- 自己主権型のID(他者に依存しない)
- プライバシー保護(必要な情報だけ開示)
- シングルサインオン(1つのIDで多様なサービスへログイン可能)
- 国境を越えたID活用(Web3やメタバースでも使える)
特に、国境をまたいで活動するデジタルノマドやクリエイターにとって、DIDは強力な武器になります。
DIDとWeb3・ブロックチェーンとの関係
DIDはWeb3やDeFi、メタバースといった分散型インターネットの基盤技術です。
たとえば、DAO(分散型自律組織)に参加する際、DIDを通じて身元確認を行ったり、メタバース内でDIDをもとにアバターの信頼性を担保することができます。
実際の活用例
1. uPort
EthereumベースのDIDソリューションで、スマホアプリで簡単に自己主権型IDを管理可能。
2. Sovrin
オープンソースでDIDを提供する非営利プロジェクト。政府や教育機関での活用事例も。
3. Microsoft Entra Verified ID
マイクロソフトもDID分野に参入。Azure上で分散型IDと検証可能な証明のサービスを提供。
DIDの課題
まだ発展途上のDIDですが、以下のような課題もあります:
- 相互運用性の確保(各プロジェクト間の連携)
- 法的整備やガバナンスの不備
- ユーザー教育と導入のハードル
ただし、技術的な標準化は進んでおり、今後ますます普及が進むと見られています。
まとめ:DIDが創る未来
DIDは、「自分自身のデジタルIDを自分で管理する」という、インターネットの新たな価値観を示すものです。
中央集権的なSNSやプラットフォームに頼らず、個人が自律的にアイデンティティを持ち、信頼性を証明できる社会はすぐそこまで来ています。
Web3、DAO、メタバースといった分野で必須の技術であるDID。今のうちに理解を深めておくことで、これからのデジタル社会を有利に生き抜くことができるでしょう。
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