ソウルバウンドトークン(SBT)とは?
NFTといえば「売買できるデジタル資産」というイメージがありますが、Web3の世界では「譲渡できない」トークン、つまり「ソウルバウンドトークン(SBT)」という概念が注目を集めています。この記事ではSBTの仕組みや技術背景、活用方法を初心者にもわかりやすく解説します。
ソウルバウンドトークン(SBT)とは?
ソウルバウンドトークン(Soulbound Token, SBT)とは、一度ウォレットに発行されると他人に譲渡できないトークンのことです。NFTの技術をベースにしている点は同じですが、取引所での売買や移転ができないという性質が大きな違いです。
このアイデアは、Ethereumの共同創設者である ヴィタリック・ブテリン氏 によって提案されました。
? Decentralized Society: Finding Web3’s Soul(原論文)
なぜ「譲渡できない」トークンが必要なのか?
SBTは「その人に紐づく信頼・実績・属性」をブロックチェーン上で表現するために使われます。例えば次のような情報がSBTで表現できます。
- 大学の卒業証明書
- 資格やスキルの証明
- 職歴・プロジェクト履歴
- DAOでの貢献履歴
- 信用スコア
これらは売買の対象ではないため、むしろ「譲渡できない」仕組みの方が信頼性が保たれるのです。
技術的な仕組み:NFTとの違い
SBTはEthereumのNFT標準であるERC-721やERC-1155に似ていますが、転送(transfer)機能を制限している点が異なります。代表的な技術仕様としては、以下のようなSBT専用のスマートコントラクトがあります。
- 譲渡機能(transferFrom, safeTransferFrom)を無効化
- 発行元によるリボーク(取り消し)機能を持たせる
- 所有者本人が「削除要求」を出せる設計も想定
開発者向けには、以下のようなSBT対応ライブラリが参考になります。
SBTの活用例
現在、SBTを活用したユースケースは次のような分野で検討されています。
1. 学歴・職歴証明
大学や企業がSBTとして「卒業証書」「就業証明書」を発行することで、ブロックチェーン上に永続的かつ改ざん不能な履歴を残せます。
2. DAO参加証明・貢献履歴
DAOメンバーの参加記録や貢献度をSBTで記録することで、エアドロップや意思決定への優先権などの付与に活用できます。
3. Web3におけるアイデンティティ
複数のSBTを組み合わせて「その人がどんな人物か」を表す「オンチェーンレジュメ(履歴書)」として活用できます。
SBTがもたらすWeb3社会の変化
- 分散型の信頼構築が可能になる
- 自己主権型ID(SSI)の実現を加速
- 信用スコアやレピュテーションの透明化
これにより、企業や団体に依存せずに「個人の信頼性」を証明できる社会が構築されつつあります。
課題と懸念点
一方で、SBTにはプライバシーや強制的なタグ付けといった懸念点もあります。
- 望まない情報がSBTとして残ってしまう可能性
- 第三者による「負のSBT」発行
- ウォレット乗っ取り時の悪用リスク
こうした課題に対しては「自己発行SBT」や「可視・不可視の切り替え機能」などの対策が検討されています。
まとめ:SBTはWeb3時代の「履歴書」になる
ソウルバウンドトークンは、これからのWeb3社会において「信用」「スキル」「所属」を証明するための重要なインフラとなるでしょう。トークン=資産 という考え方から、トークン=アイデンティティ へとシフトする流れを、今後も注目していきましょう。